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鍼灸師はやめとけ?廃業率と飽和の真実と、それでも食える2パターン

2026 6/17
転職する
2026年6月17日
読者読者
鍼灸師って「やめとけ」って言われるんですけど、実際どうなんですか……?廃業率が高いとか食えないとか聞いて、本当に目指していいのか迷ってます。
ぽんこつ先輩ぽんこつ先輩
正直に全部話します。「やめとけ」と言われる理由のどこが本当で、どこが誇張なのか。そして、それでも食えている鍼灸師は何が違うのか——両方きちんと出します。

「鍼灸師はやめとけ」と言われたことのある方、あるいは検索でその言葉を目にして不安になっている方へ。結論から言うと、この言葉には「事実の核」があります。隠しても仕方ないので、正直に数字で出します。

ただ、「やめとけ」で完結する話でもないです。廃業率の数字が業界で一人歩きしている実態や、そもそも廃業した鍼灸師のほとんどが「技術が足りなかった」のではなく「集客をしなかった」という話——採用・開業支援の現場でずっと多かったパターンです。これを知らずに判断するのは、ちょっともったいないと思っています。

この記事では、就業者数・施術所数・廃業率に関する数字を出典付きで整理したあと、実際に食えている鍼灸師の2パターンを具体的に解説します。「怖い話」と「それでも戦える話」を両方書きます。

この記事の結論(時間ない人向け)

  • 「やめとけ」と言われる理由には事実の核がある——就業者数は過去10年で約26%増(はり師136,736人・きゅう師134,730人)。施術所も増加し、都市部では過当競争が起きている
  • 廃業率「35〜40%」は公的な一次統計では確認できない——業界で流通している数字だが出典があいまい。一方、唯一これに近い学術調査(藤井亮輔ほか「あん摩マッサージ指圧業の実態に関する調査研究」日本東洋医学系物理療法学会誌 42巻2号・2017年)では、回答者の16.7%が「休業中または廃業していた」という結果がある。「廃業率35〜40%」との開きは大きく、注目に値する数字
  • 市場全体は縮んでいない——柔道整復・鍼灸・マッサージ市場は2023年に9,850億円(前年比+3.0%・矢野経済研究所)。飽和と成長が同時に起きている状況
  • 食える2パターン①: 美容鍼・専門特化で単価を上げる——通常の施術単価5,000〜8,000円に対し、美容鍼は10,000〜15,000円帯が相場。女性需要が拡大中
  • 食える2パターン②: 専門疾患+医療連携・指名で固める——不妊・スポーツ障害・慢性疾患への特化と、医療機関との連携で継続客を安定させる戦略

下に「廃業率の数字の正体」「食える2パターンの具体的な中身」「未経験30代が今から目指すための3年間の戦略」を順に並べています。気になるところだけ拾い読みしてください。

目次

「やめとけ」と言われる理由を正直に数字で出す

ここから先は不安にさせることを目的に書くのではなく、「判断材料として事実を持ってほしい」という理由で書きます。知らずに後悔するより、全部知ったうえで自分で判断する方が絶対にいいので。

就業者数は過去10年で約26%増えた

厚生労働省の衛生行政報告例(令和6年末)によると、はり師の就業者数は136,736人、きゅう師は134,730人。過去10年でおよそ26%増加しています。

国家試験の合格者数は毎年一定数出続けます。第33回試験(2025年)の合格率ははり師73.9%・きゅう師74.9%。1回の試験でそれぞれ数千人規模の合格者が出るため、業界全体への参入者は毎年着実に増えていきます。

⚠️ 就業者・施術所の数字(厚労省・矢野経済研究所)

はり師の就業者数
136,736人(令和6年末・厚生労働省衛生行政報告例)。過去10年で約26%増
きゅう師の就業者数
134,730人(同上)。はり師と同様の増加傾向
施術所数(広義)
35,494か所(2024年・矢野経済研究所。あん摩マッサージ指圧師・はり師・きゅう師の施術所を含む広義の集計範囲)。10年で約39%増
国家試験合格率(2025年・第33回)
はり師:73.9%、きゅう師:74.9%。毎年数千人規模の合格者が出る

※施術所数はあん摩・マッサージ・指圧を含む広義の集計値。はり・きゅう専用の施術所のみで見ると数字は変わります

数字のインパクトはあります。10年で就業者が26%増、施術所が39%増——これは「ライバルが確実に増えている」という意味です。特に都市部では開業しても埋まらない施術枠を抱えたまま閉院するケースが現実に起きています。

新人年収は250〜300万円、勤務平均も382万円

ぶっちゃけ、勤務鍼灸師の収入は高くないです。初任給は月給22〜25万円(年収換算で270〜300万円前後)が相場。経験を積んでも、求人ボックスの調査(2025年)では平均年収約382万円、厚生労働省JobTagの中央値が約430万円です。(求人票の提示額と実績データベースでは差が出やすい分野で、実態は両者の間あたりで見るのが現実的です)

3年間学校に通い、国家試験を通過し、330〜550万円の学費を払って就いた仕事の初任給が270〜300万円——「元が取れるのか」と感じるのは当然の感覚です。これを「大丈夫ですよ」と言うことは僕にはできません。

学費500万で新人年収270万円……「元を取るのに何年かかる?」という計算は、この記事を書きながら3回やりました。毎回うんざりしました。ただ、このしんどさを正面から受け止めて「それでも目指す」と決めた人と、「まあなんとかなるでしょ」と流した人では、開業後の動き方が変わるんです。

ぽんこつ先輩ぽんこつ先輩
「やめとけ」と言われる理由のうち、年収と参入者数の増加に関しては、僕も否定できません。この2つは現実です。だからこそ「それでも食える人は何が違うのか」が大事になってきます。

「廃業率35〜40%」の正体——この数字はどこから来たのか

「鍼灸師の廃業率は35〜40%」という数字を目にしたことがある人も多いと思います。この記事で一番大事にしたいのが、この数字の扱い方です。

結論を先に言います。「鍼灸師の廃業率35〜40%」を裏付ける公的な一次統計は、現時点では確認できません。業界の実務者・採用現場で語られてきた数字で、体感的にはそう感じている人が多い——という話が一人歩きしているのが実態です。

📊 廃業率に関して実際に参照できるデータ

業界で流通する「35〜40%」
開業5年以内の廃業率として語られる数字。ただし一次出典となる公的統計を確認できず、参考値として読んでください
唯一これに近い学術調査(J-STAGE収録論文)
藤井亮輔ほか「あん摩マッサージ指圧業の実態に関する調査研究」(日本東洋医学系物理療法学会誌 42巻2号・2017年。筑波技術大学・明治国際医療大学の研究者による調査。対象はあん摩マッサージ・はり・きゅう業者、回答4,605件)では、回答者の16.7%が「休業中または廃業していた」。「廃業率16.7%」ではなく「休業・廃業を合わせた複合指標」である点に注意。なお「廃業率35〜40%」との開きはかなり大きい
療術業の倒産件数
東京商工リサーチによると2018年の療術業の倒産は93件。ただしこれは「倒産件数」(法的整理)であり、廃業(自主閉業)とは別の数字。大多数の廃業は倒産統計に入らない

※廃業率のデータは出典によって範囲・定義が異なります。「35〜40%」を既成事実として語っているブログや記事は、一次統計の確認をせずに引用している可能性があります

では「廃業する鍼灸師はゼロか」というと、もちろんそんなことはないです。施術所が増え続けている現実から見ても、廃業が起きていることは間違いない。問題は「なぜ廃業したか」の原因です。

人材業界で20年、独立・開業支援に関わってきた経験で言うと、廃業の主因に「技術が足りなかった」という話はほとんど出てこないです。圧倒的に多いのは「集客ができなかった」です。

📌 廃業した鍼灸院に共通していたこと(現場の肌感覚)

  • 「技術が高ければ黙っていても客が来る」と信じて開業した
  • Googleビジネスプロフィールを設定せず、口コミが一件もない状態で開院した
  • SNS・ホームページを「開業後にやろう」と後回しにした
  • 施術メニューが保険診療中心で、自由診療(美容鍼・スポーツ鍼)の単価設計をしなかった
  • 経費・キャッシュフローの管理が甘く、3〜6ヶ月の赤字に耐えられなかった

逆に言えば、これらを事前に準備した鍼灸師の生存率は格段に上がります

廃業を「鍼灸師という職業の問題」と捉えると判断を誤ります。実態は「開業経営の問題」です。そして開業経営の準備は、学校在学中からでもできる。ここが一番大事な視点です。

でも市場全体は縮んでいない——飽和と成長が同時に起きている

「施術所が増えている=市場が飽和している」と結びつけたくなりますが、少し待ってほしいです。

矢野経済研究所の調査によると、柔道整復・鍼灸・マッサージ市場の規模は2023年に9,850億円(前年比+3.0%)。3年連続で拡大しています。コロナ禍が明けて行動制限が解除されたことに加え、健康意識の高まりやデスクワーク増加による慢性的な体の不調需要が、市場を押し上げています。

📈 市場規模データ(出典:矢野経済研究所)

2023年の市場規模
柔道整復・鍼灸・マッサージ市場 9,850億円(前年比+3.0%)
傾向
3年連続拡大中。日本の65歳以上人口は約3,600万人で、高齢化に伴う慢性疾患・疼痛ケア需要は長期的に続く見通し
男性市場
リクルート「鍼灸・接骨院に関する利用実態調査2025」では男性市場が前年比4.5%増(約2,213億円規模)。女性だけでなく男性需要も拡大

「供給(施術者・施術所)は増えているが、需要も増えている」——これが今の市場の正確な姿です。供給増に需要が追いついているから市場全体が拡大している。飽和しているのは「都市部の無差別化エリア」であって、「専門を絞ったゾーン」は別の話です。

「市場が拡大しているのに廃業も起きている」——つまり「取れる人はガンガン取れていて、取れない院に需要が回ってこない」という構造です。飽和しているのはポジション設計を間違えたゾーンで、専門特化ゾーンはむしろ人材不足に近い。なんか転職市場みたいな話だな、と人材業界の人間として変に笑えます。

もう一つ、AI時代の文脈でも触れておきたいです。AIの普及でデスクワーク・リモートワークが増えた結果、「腰痛」「肩こり」「眼精疲労」の慢性化が社会的な問題になっています。皮肉な話ですが、AIが働き方を変えるほど、鍼灸師の需要は逆に高まる構造があります。鍼灸師が「AIに仕事を奪われる側」ではなく、「AI時代が生んだ新しい患者層を受け取る側」になれるかどうか——ここが面白いポイントです。

ぽんこつ先輩ぽんこつ先輩
「飽和しているから食えない」と「市場が成長しているから機会がある」は、同時に成立します。どの層を狙うか、どう差別化するか次第で、見える世界が変わってくる。ここを無視した「やめとけ」は、ちょっと大雑把すぎると思っています。

それでも食える2パターン——何が「食えない鍼灸師」と違うのか

ここからが本題です。廃業率が話題になる中でも、手取りで年600〜750万円を安定して稼いでいる鍼灸師は実在します。彼らと廃業した鍼灸師の違いは、技術の差よりもポジショニングの差です。

パターン①: 美容鍼・専門特化で単価を引き上げる

通常の鍼灸施術(腰痛・肩こり・自律神経など)の単価は、1回5,000〜8,000円が相場です。一方で美容鍼は10,000〜15,000円、専門サロンでは20,000円超の設定も珍しくない。

美容鍼の何がいいかというと、「ニーズの性質」です。腰痛の患者さんは「痛みがなくなったら通うのをやめる」ケースが多い。でも美容鍼に通う方は「きれいでいたい」という継続ニーズを持っています。リピート率が高く、単価も上がる——これが収益モデルとして優れている理由です。

💄 美容鍼ミックス院の収益モデル(試算)

▌ 軌道に乗った場合(開業2〜3年目・安定期)

  • 1日の施術数:8人(内訳:通常鍼灸5人 @ 6,000円 + 美容鍼3人 @ 12,000円)
  • 平均客単価:(5×6,000 + 3×12,000) ÷ 8 = 7,500円
  • 稼働日数:月23日
  • → 月商:8人 × 7,500円 × 23日 = 約138万円 / 年商:約1,656万円
  • → 経費(家賃・材料費・広告費・通信費等)年間500〜600万円を差し引き
  • → 手取りの目安:年600〜750万円(所得税・住民税を含む税引後)

▌ 立ち上がり1年目(予約が埋まらない時期)

  • 1日の施術数:3〜4人(稼働率40〜50%)
  • → 月商:3〜4人 × 7,500円 × 23日 = 51〜69万円
  • → 固定経費はほぼ同額のため、純利益はゼロ〜小幅赤字の月が続く可能性あり
  • → 「生活費は別に確保しておく」資金計画が1年目の必須条件

※あくまで試算モデルです。実際の収入は集客力・立地・経費構造によって大きく変わります。1年目のしんどさを含めてリアルに見てください

「手取り600〜750万円」というのは、1年目を乗り越えて集客が安定した段階での話です。そこに至るまでの1〜2年が収入的にシビアなことは、試算の通りです。大前提は「集客を先に仕込んでいること」。これなしでは上の試算は成り立ちません。

美容鍼のマーケティングはSNS(特にInstagramとTikTok)との相性がよいです。ビフォーアフター写真・施術動画は拡散されやすく、うまく運用できれば広告費を抑えながら新規顧客を取り続けられます。AIツール(画像生成・コンテンツ作成補助)を使って投稿効率を上げている鍼灸師も増えています。「手技の仕事だから、SNSやAIは関係ない」という発想では今の競争では厳しい。これは現実です。

整体師が小顔矯正・骨盤矯正などの美容メニューを持てるのに対し、「顔への鍼施術」ができるのは国家資格を持つ鍼灸師だけです。これは法律で守られた差別化ポイントで、整体師には真似できない強みです。

ぽんこつ先輩ぽんこつ先輩
美容鍼は「美容に使えるお金を持っている層」を狙えます。高齢化ケア需要は安定しているものの単価が伸びにくい。美容需要は「きれいでいたい」の継続意欲が強いので、リピート単価ともに高い。二本の収益軸を持てるのが鍼灸師の面白いところです。

パターン②: 専門疾患への特化+医療連携で指名を固める

もう一つのパターンは「特定の患者層を深掘りして、他の院には行けなくなってもらう」という戦略です。具体的には不妊治療サポート・スポーツ障害・慢性疼痛(腰痛・頭痛・神経痛)・緩和ケアなど。

🎯 専門特化+指名固めの具体的な戦略

  • 不妊治療サポート鍼灸——不妊クリニックとの連携・院長紹介で安定した紹介患者を確保。患者の通院期間が長く(数ヶ月〜1年以上)、単価も通常より高めに設定できる
  • スポーツ障害特化——アスリート・スポーツクラブとの契約で継続的な施術依頼が発生。試合前後のコンディショニングニーズが高く、男性患者の指名も取りやすい
  • 慢性疼痛・神経痛専門——整形外科・ペインクリニックからの紹介連携。「病院では薬しかもらえなかった」という層への出口を鍼灸が担う
  • 緩和ケア・がんサポート——抗がん剤の副作用軽減・疼痛緩和で緩和ケア病棟や在宅医療との連携。高い倫理観と専門知識が必要だが、信頼が確立すれば安定した紹介元になる

このパターンの強みは「価格競争に巻き込まれにくいこと」です。「不妊治療中の体づくりをお願いできる鍼灸師」を探している方は、近所で一番安い鍼灸院には行きません。「この人に診てもらいたい」という指名需要が生まれるからです。

鍼灸師のAI代替を語るうえで、この「指名・信頼関係」はかなり大事なポイントです。施術計画の提案にAIが補助に入ったとしても、「あなたに施術してほしい」という患者との関係性はAIには代替できません。これがパターン②の本質的な強みです。鍼灸師の将来性とAI代替の構造的な話は、鍼灸師の将来性とAI代替の法構造を解説した別記事で詳しく解説しています。

未経験30代が今から鍼灸師を目指すなら——3年間の現実戦略

「やめとけと言われる理由もわかった。でも美容鍼か専門特化でいけるかもしれない」——そう思い始めた方へ。30代から現実的に目指す場合の戦略を整理します。

夜間部ルートが社会人には現実的

鍼灸師(はり師・きゅう師)になるには、養成施設での3年以上の教育を受けて国家試験に合格する必要があります。社会人・在職中の方には、夜間部専門学校が最も現実的です。

🎯 30代社会人が選ぶべきルートの比較ポイント

  1. 昼間部 vs 夜間部:生活スタイルで決める
    夜間部は昼間に仕事をしながら夕方〜夜に通学できる。在学中の収入を保てる分、経済的なリスクが低い。ただし体力的な負担は重く、3年間続けられるかを現実的に考える必要がある
  2. 学費の目安:昼間部330〜550万円、夜間部300万円台が多い
    学校・地域によって差があるため、候補校の公式サイトで必ず確認する。給付金を使えば実質負担を大幅に圧縮できる(後述)
  3. 国家試験は「新卒で受ける」が絶対に有利
    全体合格率ははり師73.9%・きゅう師74.9%(第33回・2025年・厚生労働省)だが、これは新卒・既卒の合算値。新卒(養成校を修了したその年に受験)に比べ、既卒(働きながら再受験など)は合格率が下がる傾向がある。3年間きちんと修了して現役で受かることが、最短ルートへの必須条件
  4. 卒業後の就職・独立サポートを事前に確認する
    美容鍼・スポーツ分野への就職ルートや開業支援の実績が、学校によって大きく異なる。入学前に卒業後の進路を聞いておく

給付金制度で学費の実質負担を下げる方法

3年間・330〜550万円の学費は重いですが、「専門実践教育訓練給付金」という雇用保険の給付制度を使うと、実質負担を大幅に圧縮できます。

📋 専門実践教育訓練給付金(雇用保険の給付制度)

給付率・上限
受講中:年間最大40万円×3年+資格取得後就職で72万円追加。合計最大192万円(学費の最大80%相当)
対象要件
雇用保険の被保険者期間が2年以上(初回は1年以上でも可)。在職中・離職後いずれも申請可能
注意点
給付は後払い。学費は先払いが必要なため、入学前の資金計画が重要。入学前にハローワークで対象校確認が必須

※最新の給付要件・対象校は厚生労働省公式サイトまたはハローワーク窓口でご確認ください。制度内容は変更される場合があります

昼間部で学費400万円の学校でも、給付金192万円で実質208万円まで下がる。夜間部300万円台なら、給付後は100万円台に入るケースもあります。「学費が高すぎて無理」と判断する前に、必ず給付金の試算をしてから決めてください。

在学中から「食えるポジション」の準備を始める

3年間は長いようで、実は開業準備の絶好の時間です。在学中にやっておくべきことをあげます。

📚 在学3年間でやっておくべき準備

  • 専門軸の仮決め——美容鍼・不妊・スポーツのどれに特化するかを1年次から絞り始める。授業外での学習・実習先の選択にも影響する
  • SNS運用の開始——「鍼灸師を目指す社会人の記録」として発信を始める。卒業時点でフォロワーがいれば、開院初日から集客ゼロにならない
  • AIツールの習得——ChatGPT等を使ったコンテンツ作成・SNS投稿の効率化を学ぶ。技術を磨きながら集客スキルも並行習得できるのが今の時代の強み
  • 医療機関・美容室への接触——地域の産婦人科・整形外科・スポーツクラブへの挨拶まわりは、開業前から動けば卒業後の紹介連携がスムーズになる
  • Googleビジネスプロフィールの準備——開院予定の住所が確定したら、早期に設定して口コミを集め始める
ぽんこつ先輩ぽんこつ先輩
廃業した鍼灸師と生き残った鍼灸師の差は、技術より「開業前に集客の準備をしていたか」です。3年間は長いですが、その間に集客の土台を作れた人は開業初日から違う。逆に「資格を取ってから考える」という人は、学費と3年間を使って「出だしゼロ」からスタートすることになります。

よくある質問

💬

読者のリアルな疑問、ここで全部答えます

「本当に廃業率35〜40%なの?」「30代・40代からでも間に合う?」「美容鍼だけで食えるの?」など、鍼灸師を目指す人が必ず引っかかる疑問を、ぽんこつ先輩(人材業界20年)が現場目線で答えます。

廃業率35〜40%という数字は本当ですか?

この数字を裏付ける公的な一次統計は現時点では確認できません。業界実務者の体感・経験則として語られてきた数字が、出典があいまいなまま広がっているのが実態です。

参考にできる一次情報として、藤井亮輔ほか「あん摩マッサージ指圧業の実態に関する調査研究」(日本東洋医学系物理療法学会誌 42巻2号・2017年、筑波技術大学・明治国際医療大学、回答4,605件)があります。同調査では、回答者の16.7%が「休業中または廃業していた」という結果でした。ただしこれは「廃業率16.7%」ではなく「休業・廃業の複合指標」です。また調査時点から年数も経っているため、現在の廃業率を直接示すものではありません。東京商工リサーチの2018年データでは療術業の倒産件数は93件ですが、「倒産」は法的整理を伴うもので、自主閉業(廃業)とは別の数字です。

結論として、「廃業するリスクはゼロではないが、35〜40%という数字を額面通りに信じる必要もない」というのが正直なところです。少なくとも唯一の学術調査が示す「休業・廃業の複合値16.7%」と「35〜40%」の間にはかなりの開きがある——準備次第でリスクは変わると考えるべきでしょう。

30代・40代から鍼灸師を目指すのは遅いですか?

遅くないです。夜間部専門学校には社会人・子育て中の30〜40代入学者が一定数います。ただし「遅くない」と「ラクではない」は別です。3年間の夜間通学は体力的に重く、在職中のフルタイム勤務と並行する場合は家族の理解と生活設計の見直しが必要です。

40代で入学するなら「50代前半に独立する」という長期計画を描けるかどうかが鍵になります。また、勤務経験が長い社会人は「接客・コミュニケーション・経営感覚」という鍼灸院の経営に直結するスキルをすでに持っているケースが多い。これは20代の新卒にはない強みです。

美容鍼だけで食えますか?

食えます。ただし「集客が確立できれば」という条件付きです。美容鍼は単価が高く(10,000〜15,000円)、リピート率も高い分野ですが、その分「なぜ他院ではなくここに来るのか」の差別化が問われます。

Instagram・TikTokでの発信力を持つ鍼灸師は、集客コストを抑えながら新規顧客を安定的に取れています。逆に「美容鍼専門」を名乗るだけで特に発信・マーケティングをしない院は、埋まらない施術枠が続く結果になりやすいです。美容鍼+集客スキルのセットで考えるのが正解です。

鍼灸師はAIに仕事を奪われませんか?

現状では、鍼灸師がAIに代替される可能性は低いと見ています。理由は2つあります。

一つは法律の構造。あはき法(あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師等に関する法律)により、鍼・灸を業として行えるのは国家免許を持った者のみです。AIや機械は法的な「者」ではなく免許を取得できないため、免許保持者の管理外でAIが施術を事業化することは現行規制下では困難です。もう一つは施術の属人性。患者の脈・腹部の緊張・ツボの反応を指先でリアルタイムに読む触覚フィードバックは、現状のロボット技術が最も苦手とする領域です。

ただし「AIを使いこなす鍼灸師」と「AIを無視する鍼灸師」の差は今後どんどん開くと思います。AIは施術を奪わないけれど、集客・予約管理・コンテンツ作成の効率化では使いこなすかどうかで明らかな差がつきます。詳しくはAI時代の視点から整理した鍼灸師の将来性とAI代替の真実(別記事)をあわせて読んでみてください。

保険適用はなくなっていくのですか?

保険適用の要件は年々厳しくなっています。鍼灸の保険適用には医師の同意書が必要で、かつ適応症(神経痛・リウマチ・頸腕症候群・五十肩・腰痛症・頸椎捻挫後遺症の6疾患)に限定されます。「保険でなんでも診れる」は今の現実と違います。

これは逆に言えば「自由診療で差別化する余地がある」ということでもあります。保険外の美容鍼・スポーツ鍼・不妊サポートなど、自由診療で単価設計できるメニューを持つことが、今後の鍼灸師の収益モデルの中心になっていくと思います。

まとめ——「やめとけ」を踏まえたうえで、どう判断するか

「やめとけ」と言われる理由は、就業者・施術所の増加と初任給の低さに現実の核があります。廃業率の「35〜40%」という数字は公的統計では確認できませんが、準備不足での開業リスクは実在します。これは全部、正直に認めます。

一方で市場全体は9,850億円規模で拡大中。廃業する鍼灸師のほとんどは「技術不足」ではなく「集客不足」が原因です。美容鍼や専門特化でポジションを作り、在学中から集客の土台を仕込んだ鍼灸師は、廃業率の統計とは別の世界にいます。

「やめとけ」と言っている人は、準備不足で開業した鍼灸師の結末を見てきた人たちです。その忠告は正しい。ただし、同じ情報を持ちながら準備をして開業した鍼灸師の話も、同じくらい存在します。どちらの側に入るかは、資格を取る前から少しずつ準備を始めた人とそうでない人で変わってきます。今から動き始めた人の3年後は、また違う景色になっていると思います。

🗓️ シンプルなアクションプラン

  • 今日中にできること:近所の鍼灸院を3軒、GoogleマップとInstagramで調べる。繁盛している院と閑散としている院の差が何か——口コミ数・発信力・メニュー——を自分の目で観察する
  • 今週中にできること:美容鍼の施術を実際に一度客として受けてみる。施術を体験しながら「このビジネスはどう成り立っているのか」を肌で感じる(「向いてるかも」「思ってたのと違う」どちらの感想も大事な情報です)
  • 1ヶ月以内:夜間部専門学校のオープンキャンパスに参加し、在校生・卒業生の話を直接聞く。「フルタイムで働きながら3年続けられるか」を体力・家族含めて自分でジャッジする
  • そのうえで給付金を確認:ハローワークで専門実践教育訓練給付金の対象要件・対象校を確認する。入学を決めてから使う制度なので、焦らず確認でOK
ぽんこつ先輩ぽんこつ先輩
全部一気にやる必要はありません。今日、まず1つだけやってみてください。「近所の鍼灸院を3軒、Googleマップで比べる」——それだけでも、この仕事の現実が少し具体的に見えてきます。

📖 もっと深く知りたい人へ・関連記事

鍼灸師の将来性・AI代替の法的構造・国家資格としての優位性については、こちらの記事でも詳しく解説しています。

  • → 鍼灸師の将来性とAI代替の真実——業務独占の法構造と触覚の属人性で読み解く

※鍼灸師スクールの選び方・資格・学費の詳細記事は順次公開予定です

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ぽんこつ先輩のアバター ぽんこつ先輩

人材業界で20年働いてるおっさん。AIの進化にビビりながらも、負けじと足掻いてる側の人間。同じ不安を抱えてる仲間と一緒に生き残るためにこのブログを始めた。

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ぽんこつ先輩
人材業界で10年働いてるおっさん。AIの進化にビビりながらも、負けじと足掻いてる側の人間。同じ不安を抱えてる仲間と一緒に生き残るためにこのブログを始めた。
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