
読者(PT歴10年)

ぽんこつ先輩
「リハビリ職がAIに奪われる」——最近こういった話、ちょっと耳に入ってきていませんか。
AIが画像診断をサポートする、生成AIが医療記録を自動で書く。そういうニュースが増えるにつれて、「次はリハビリか」と感じている方は多いと思います。特に30〜40代のベテランほど、「今のうちに手を打つべきか」という焦りがある。
でも、ちょっと待ってほしいんです。「AIに奪われるリスク」と「本当に気にすべきリスク」は、じつは別物なんですよね。この記事では3つのことを整理します。①データから見たAI代替リスクの実態、②PT・OT・STで影響がどう違うか、③「AIより怖い」2026年問題の正体と、今から動くべき理由。5分だけお付き合いください。
この記事の結論(時間ない人向け)
- AI代替率はPT 0.4%・OT 0.1%——業界でも最低水準。「AIに仕事を取られる」リスクは現時点でほぼゼロです
- でも2026年から「供給過剰」が現実問題になる——厚労省推計では2040年にPT約1.6倍・OT約1.3倍の供給過多。採用競争の激化と給料の頭打ちが先に来ます
- PT・OT・STでリスクの大きさがぜんぜん違う——STは有資格者が少なく供給過剰リスクが相対的に低い。職種によって「今動くべきか」の判断が変わります
- AIは「記録・予測」で現場に浸透中——すでに36%のセラピストが業務でAIを使っており、使いこなせる人材が優位になる時代に入っています
「AIに奪われる」心配より、供給過剰が本当のリスク。どちらの不安も解消してから動きたい方は、このまま読み進めてください。
📌 職種別の深掘りを先に見たい人はこちら
- 理学療法士(PT)の将来性とAI活用(準備中)
- 作業療法士(OT)の将来性とAI活用(準備中)
- 言語聴覚士(ST)の将来性とAI活用(準備中)
この記事はPT・OT・ST全体をまとめて見る記事です。各職種の詳しい話は個別記事で深掘りします。
「AIに奪われる」——まず数字から見てほしい
不安なのはよくわかります。でもとりあえず、こちらの数字を見てください。
野村総合研究所とオックスフォード大学の共同研究(2015年)によると、理学療法士(PT)のAI代替可能性は0.4%、作業療法士(OT)は0.1%です。
🤖 職種別AI代替可能性(野村総研×Oxford 2015年研究に基づく)
- 理学療法士(PT):0.4%
- 作業療法士(OT):0.1%
- (参考)放射線技師:62.4%
- (参考)薬剤師:38.8%
⚠️ この数字は2015年時点の研究で、PTとOTの個別数値は週刊エコノミスト経由の二次引用です。参考値としてご覧ください。言語聴覚士(ST)は独立した調査数値なし。
放射線技師62.4%や薬剤師38.8%と比べると、リハビリ職のAI代替リスクはダントツで低い。「なんでそんなに低いの?」と思うかもしれませんが、理由は3つあります。
1つ目が身体接触を伴うという点。徒手療法、歩行介助、摂食嚥下訓練——これらはAIに代替できません。触れること、感じることが治療の本体ですから。
2つ目が動機づけと関係性。回復のモチベーションを維持するのは機械ではなく人間の仕事です。「あなたの担当は〇〇さん」という安心感が、実際の回復に影響します。
3つ目が制度の縛り。2026年の診療報酬改定では、看護や医師事務でAI・ICT活用による配置緩和が一部進みましたが、リハビリ職の人員配置基準はAI代替による緩和が認められていません。PT・OT・STが実施する療法の診療報酬は有資格者が直接対応することが前提です。AIで効率が上がっても、それが即・人員削減につながらない構造になっています。
ぶっちゃけ、「AIに仕事を奪われる」と心配しているセラピストの方には「そっちは今のところ大丈夫ですよ」と言いたいです。でも……次のセクションが本番です。
現場でAIは実際どう変わっているのか(2025〜2026年最新動向)
「代替されない」と言いましたが、AIがリハビリ現場に入り込んでいることは事実です。何が変わっているのか、具体的に見ていきます。
リハビリロボット・AIシステムの最前線
ここで登場する3つのシステムに共通しているのは、「PTの代わり」ではなく「PTが使う道具」という位置づけです。まずざっと概要を掴んでから各詳細を読むと、全体像がつかみやすいです。
🦾 リハビリAI・ロボット3製品:早わかり比較
| 製品名 | 何をする | 主な導入先 |
|---|---|---|
| RenaX(ソニーNC) | 退院後のFIM・入院期間をAIが予測 | 回復期リハ病棟 |
| HAL(サイバーダイン) | 神経信号を読んで歩行を補助する装着型ロボ | 医療機関・リハビリ専門病院 |
| Lokomat(Hocoma) | 外骨格で繰り返しの歩行訓練をサポート | 世界各国の施設で広く導入・県立リハビリ病院等 |
RenaX(ソニーネットワークコミュニケーションズ)は、回復期リハビリ病棟向けの予後予測AIです。2024年6月に一部病棟へのテスト導入を経て、2025年7月31日に一般提供を開始。FIM(機能的自立度評価表)全18項目と入院期間を予測する20のAIモデルを搭載しており、北海道の十勝リハビリテーションセンター(北斗病院)との共同研究から生まれたシステムです。
HAL(サイバーダイン)は装着型の歩行補助ロボットです。神経信号を皮膚センサーで読み取って動作を補助します。2025年1月には小型モデル(身長100〜150cm対応)が国内承認を取得し、小児や低身長の患者にも使えるようになりました。
Lokomat(スイス・Hocoma社)は外骨格タイプの歩行支援ロボットで、世界各国の施設で広く導入されています。2024年には適応型AIアルゴリズムを搭載した新バージョンが登場し、国内でも兵庫県立リハビリテーション中央病院などで稼働しています。
これらのロボットは「PTの代わり」ではなく、「PTが使う道具」です。むしろ操作できないセラピストは時代遅れになっていく——そう考えてください。

ぽんこつ先輩
生成AI活用の実態調査(2025年)
PT-OT-ST.NETが2025年に行った調査(n=117、PT76%・OT21%・ST3%)の結果がかなり興味深くて、すでに36%のセラピストが生成AIを業務で活用しています。未活用者の69%が「今後使いたい」と回答し、活用者の76%が1日30分以上の業務時間短縮を実感。満足度4点以上が85%、必要性を感じている人が92.9%という数字です。
何に使っているかというと、記録の下書き、プログラムの案出し、資料作成などが多い。もうAIが現場に定着しつつあることを示しています。
リハビリサマリーAI研究——速さ57%削減、でもエラー率81.8%という現実
2026年5月に学術データベース「Cureus」に掲載された研究(京都の蘇生会総合病院・290床、PT/OT/ST 21名)が面白い結果を出しています。
生成AIでリハビリサマリーを作成した場合、作業時間が中央値23.0分から10.0分へ——57%削減されました。これはすごい。でも同時に、サンプル11件中9件にエラーが含まれていて、エラー含有率は81.8%。主な原因はカルテに記載のない疾患名の捏造(ハルシネーション)で、19件のエラーが確認されています。
要するに、11件試して9件に間違いが含まれていた——ほぼ9割の確率でエラーが出る計算です。AIは速いけれど間違える。セラピストが確認してはじめて安全に使える状況で、「AIが全部やってくれる」は現時点ではあり得ません。「AIを使いこなして生産性を上げる人材」が強くなる——そういう時代に入ってきています。
PT・OT・ST、じつはぜんぜん違う「AI耐性と将来リスク」
ここが今日一番伝えたいポイントです。「リハビリ職」とひとくくりにして話す人が多いんですが、PT・OT・STでは置かれている状況が全然違います。
※スマホは表を左右にスクロールすると全項目が見られます
出典:野村総合研究所(2015)・厚生労働省PT/OT需給推計(2019年)・PT-OT-ST.NET調査(2025年)。供給過剰推計はPTとOTのみが対象。有資格者数は複数メディア概数のため衛生行政報告例で要確認。
この表を見て「自分はSTだから安心」「PTだから焦る」と単純に判断するのは少し違います。ポイントはAIではなく、供給過剰という軸で考えること。次のセクションで整理します。
「AIより怖い」2026年問題の正体
ここからが、競合のリハビリ記事ではほとんど書かれていない部分です。
厚生労働省が2019年に行ったPT・OT需給推計(第3回PT・OT需給分科会)によると、2040年時点でPTの供給は需要の約1.6倍、OTは約1.3倍になると試算されています。供給が需要を大幅に上回る、いわゆる「供給過剰」の状態です。(STはこの推計の対象外ですが、有資格者数が相対的に少ないため、過剰リスクは低いと考えられています)
供給過剰が引き起こすこと
⚠️ 供給過剰が引き起こす現実的な影響
- 新卒・転職者の就職競争が厳しくなる
- 給料の上昇が止まる(買い手市場化)
- 希望の職場・地域・診療科に入りにくくなる
- 非常勤・パートでの雇用が増え、正職員ポストが減る可能性がある
実際の年収データを見ると、令和6年の賃金構造基本統計調査(PT・OT・ST・視能訓練士合算)では平均年収約444万円(月収30.9万円+賞与71.7万円)。「頑張って取った国家資格にしては……」と感じる方も多いと思います。1,000人以上規模の施設では約485万円まで上がりますが、それでも同年代の一般企業と比べると頭打ち感がある。年収が伸び悩んでいる理由が、ここにあると思っています。
「2026年問題」のタイムライン
「2026年問題」という言葉が広まった背景には、養成校の定員増が続き、毎年の卒業者が積み上がってきたことがあります。複数の医療メディアが「2026年前後から市場の飽和が顕在化し始める」と指摘しており、厚労省の2040年推計(PT約1.6倍・OT約1.3倍の供給過多)に向けてその拡大過程がちょうどこの時期から本格化する——そういう流れです。断言できるものではなく「2026年から急に何かが起きる」わけではありませんが、水面下でじわじわと進んでいるのは確かです。ただ地域差がかなり大きい。都市部では競争が激化する一方、地方では依然として人手不足が続く施設もあります。
今の30〜40代が50代になる頃には、今とかなり違う環境になっているかもしれません。劇的に変わるというよりじわじわと進みますが、「転職の選択肢が狭まってから動く」より「選択肢がある今のうちに動く」方が、確実に有利です。
じゃあどう動けばいい?——AI時代のリハビリ職戦略
ここまで読んで「で、具体的には?」となっていると思うので、整理します。
1. 生成AIを使う側に回る
先ほどの調査で、生成AI活用者の76%が「1日30分以上時間を短縮できた」と感じています。記録の下書き、勉強資料の整理、退院計画の案出し——これらに生成AIを使うのは今すぐできます。ポイントは「AIが作ったものを必ず自分で確認する」こと。エラー率81.8%というデータが示すように、生成AIはまだ間違えます。「確認者として使いこなす」スキルが、これから価値を持ちます。
2. 専門性を深める(供給過剰対策)
供給過剰の影響を受けにくいのは、希少な専門性を持つセラピストです。PTなら心臓リハ・がんリハ・訪問リハ、OTなら精神科作業療法・就労支援、STなら小児言語発達・AAC(拡大代替コミュニケーション)・嚥下の専門家など。汎用的な「平均的セラピスト」より、特定分野のスペシャリストの方が需要が安定します。
3. 転職活動で「今の自分の市場価値」を知る
「転職するかどうか」は後で決めていいんです。でも「自分が市場でどれくらいの評価なのか」を知らずにいるのは、キャリア設計で大きなハンデになります。コメディカル専門の転職サービスに登録して担当者と話してみるだけで、「今の施設の待遇が業界水準からどこにあるか」が見えてきます。
コメディカル専門の転職サービスで市場感を掴む
コメディカル(リハビリ・医療技術職)の転職サービスは、一般の転職サービスとは別枠で存在しています。担当者が「理学療法士の求人」「作業療法士の転職市場」を専門で扱っているため、一般の担当者より深い情報を持っています。
📋 コメディカル専門転職サービス(登録は無料・市場調査だけでもOK)
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PTOTSTワーカー(PT・OT・ST専門の転職サービス)— 約2万件の求人を扱うPT・OT・ST専門サービス。利用者満足度の高さで知られ、「まずどこから試すか迷う」人の定番 -
マイナビコメディカル(総合系コメディカル転職サービス)— 5万件超の求人を扱う大手(非公開求人4割)。都市部・大手施設の求人が充実しており、年収アップを狙う場合の候補に -
PTOT人材バンク(リハビリ専門の転職サービス)— 全国対応で、職場の内部情報に強い -
レバウェルリハビリ(リハビリ専門の転職サービス)— 職場の人間関係・残業実態などの内部事情に強み。「今の職場を変えたいが失敗したくない」という方向け
転職するかどうかは後で決めれば十分です。担当者と話して、今の自分の市場価値と、供給過剰の地域別の実態を確認してみてください。
よくある質問
読者が引っかかりやすい疑問を、ここで整理します
「供給過剰っていつから?」「STは本当に安全なの?」「今転職すべき?」など、リハビリ職のキャリアを考える人が引っかかる疑問を、ぽんこつ先輩(人材業界20年)が現場目線で答えていきます。

ぽんこつ先輩
Q. リハビリ職が「AIに奪われない」根拠はどこにあるの?
大きく2つあります。まず数字の面では、野村総合研究所とオックスフォード大学の共同研究(2015年)でPTの代替可能性は0.4%、OTは0.1%です。同研究で放射線技師が62.4%なのと比べると、代替困難な職種に分類されています。
もう一つは制度面。2026年の診療報酬改定でリハビリ職の人員配置基準にAI代替による緩和はありませんでした。有資格者が直接実施することが算定の前提なので、AIが入っても「人を減らす」という話にはなりにくい構造です。ただし2015年の数字はあくまで参考値。技術の進歩とともに状況は変わります。油断はしない方がいいです。
Q. 供給過剰はいつから本格的に影響が出る?
厚労省の推計(2019年)では2040年に向けて徐々に過剰が拡大していくとされています。劇的に変わるというよりじわじわと影響が広がるイメージで、体感として出やすいのは「求人が減る」「給料交渉が通りにくくなる」「転職の選択肢が狭まる」という形です。都市部では数年後に体感できるレベルになってくると思います。
ただ、これは地域差が大きい。地方ではまだ人手不足が続いている施設も多く、都市部と地方では体感できるスピードが全く違います。日本理学療法士協会や日本作業療法士協会が公表している会員統計、あるいは求人サイトで職種・地域を絞って件数の推移を見ると、ある程度傾向が読めます。
Q. STはPTやOTより将来性があるの?
供給過剰という軸で見ると、相対的にリスクが低いのは事実です。有資格者が約4万人(PTの約3分の1)と少ないため、需給バランスが崩れるスピードが遅い。嚥下評価(内視鏡・触診を使う)や小児言語発達は、AIが踏み込みにくい領域でもあります。
注意点もあって、言語系AIや音声分析AIの進歩はSTの業務に影響する可能性があります。「STだから安心」というより「嚥下・小児言語など、AIが代替しにくい領域で専門性を深める」方向が長期的に有利です。
Q. AIが記録を書いてくれるようになったら、人員削減されない?
制度上、今のところは難しいです。診療報酬でリハビリを算定するには有資格者が直接実施することが前提で、「AIが記録を手伝う→その分人を減らせる」という発想は現行制度では通用しません。
とはいえ、制度は変わります。10年・20年のスパンで見ると、AIによる効率化が人員配置の見直しにつながる可能性はゼロではありません。今のうちに「AIを使いこなせる人材」として価値を積み上げておくことが、長期的な保険になります。
Q. 転職活動、今すぐ始めた方がいい?
「転職活動=転職」ではないです。まずは転職サービスに登録して担当者と話して、「自分が市場でどう評価されているか、今の施設の条件は業界水準からどこにあるか」を知るだけでも大きな意味があります。転職するかどうかは、それを知ってから決めれば十分です。
供給過剰の波は地域差が大きく、地方では人手不足が続いている施設も多い。自分の地域の状況を知ることが、正しい判断の出発点です。
まとめ——今日から動けることを1つだけ決めよう
整理します。
AIがリハビリ職を奪うリスクは、現時点ではほぼないです。制度がセラピストを守っている構造があり、身体接触・動機づけ・急変判断はAIに代替できない。ただ、AIを使いこなせるセラピストとそうでないセラピストで、数年後には差がついてくるのは間違いないです。
本当に気にすべきは供給過剰の方です。2040年に向けてPTは約1.6倍、OTは約1.3倍の過多になるという推計は、「仕事はあるけど競争が厳しくなる」という未来を示しています。特に都市部の30〜40代には現実的な話です。
今すぐ大きく動く必要はありません。ただ、「市場感を掴む」という一歩だけは早い方がいいです。怖いと感じているうちは、まだ間に合います。
🗓️ シンプルなアクションプラン
- 今日中にできること:コメディカル専門の転職サービスに無料登録して、自分の職種の求人数・条件相場を確認する
- 今週中にできること:生成AIを1つ業務に試してみる(記録の下書き補助から始めると低リスク)
- 1〜3ヶ月後:担当者との面談で、自分の施設の条件が業界水準からどの位置にあるか把握する
- 6ヶ月後:転職するか・今の職場で専門性を深めるか、判断する

ぽんこつ先輩
供給過剰が来る前に、今の自分の市場価値を知っておこう
転職するかどうかは後で決めれば大丈夫。まずは登録して、担当者と話すだけ。
無料・5分で完了します。
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