「次はあなたの番だと思う」。部署の誰かが会社を去ったあと、残った人にそう告げられる場面が、ここ数年で確実に増えています。正式に解雇を告げられたわけではありません。ただ、任される仕事が静かに減っていきます。議事録は自動で作られ、問い合わせの一次対応は人の手を通らずに終わります。空いた時間が増えるほど、次は自分ではないかという考えが強くなります。この記事は、その不安をなだめるためのものではありません。いま実際に置き換わっているものと、まだ残っているものを切り分けて、自分がどちら側にいるのかを確かめる材料を並べます。
リストラの前に、仕事の中身が先に変わります
AIの導入は、多くの場合いきなり人員削減として告げられません。先に変わるのは仕事の中身です。決まった書式への転記、定型的な問い合わせへの返信、数字の集計と報告書への貼り付け。こうした作業が一つずつ自動化され、担当していた人の持ち時間が空きます。
空いた時間に新しい役割が割り当てられれば、その人の立場は残ります。割り当てられないまま時間が空き続けると、次の組織変更のときに席そのものが検討の対象になります。「次はあなたの番」という言葉は、この順番を何度か見てきた人の実感なのだと思います。
ここで大事なのは、危ないかどうかを決めているのが職種の名前ではないという点です。自分の一日のうち、自動化しやすい作業がどれだけの割合を占めているかで決まります。同じ肩書きでも、置き換わる速さは人によって違います。
置き換わりやすい作業には共通点があります
これまで自動化が先に進んだ作業を並べると、共通点が見えてきます。
- 入力と出力が文字と数字だけで完結する
- 手順が決まっていて、判断の幅が小さい
- できあがったものの正しさを、あとから機械的に確認できる
- その場に体がなくても進められる
この四つが揃っている作業は、遅いか早いかの違いはあっても、いずれ機械の側に移ります。逆に、どれかが欠けている仕事は残ります。相手の表情を見ながら段取りを変える、その場にある物の状態を確かめる、話が噛み合わない人の間に立って落としどころを作る。こうした仕事は文字の外側にある情報を扱うため、いまのところ人が引き受けています。
同じ事務職でも、残っている人と減っていく人がいます
事務職という言葉の中身は、会社によって大きく違います。伝票の処理と入力が仕事の中心なら、自動化の影響は直接届きます。一方で、社内の調整役として立ち回っている人や、取引先との窓口として顔と名前で覚えられている人は、置き換えの順番が後ろになります。仕事の内容が人に紐づいていて、文字に書き出せない部分が多いためです。
自分がどちらに近いのかを測るなら、一週間の仕事を思い出して、次の質問に答えてみてください。誰かが自分の代わりに入ったとして、引き継ぎの資料だけで同じ成果が出せるでしょうか。資料だけで足りるなら、その仕事は文字に落ちています。足りないなら、文字に落ちていない部分があなたの価値です。
人が足りない分野は、はっきり分かれています
AIによって仕事が減る分野がある一方で、人がまったく足りていない分野もあります。厚生労働省の職業安定業務統計では、建築・土木・測量技術者の有効求人倍率は4.85倍です。全職業の平均を大きく上回り、募集をかけても人が集まらない状態が続いています。
どちらの分野も同じ経済の中にあります。違うのは、その仕事が現場に体を置くことを必要とするかどうかです。図面どおりに物ができているかを確かめる、その日の天気と職人の動きを見て順番を組み替える。こうした仕事は画面の中では完結しません。この境界線については、次の記事でもう一段細かく整理します。
いま確かめておくこと
不安の正体は、多くの場合「自分の仕事がどちら側なのか分からない」ことにあります。分からないまま求人を眺めても判断はできません。まずやることは転職活動ではなく、自分の一日の棚卸しです。
一日の作業を書き出し、先に挙げた四つの共通点に当てはまるものに印を付けてください。印が半分を超えていたら、いまの立場は思っているより早く変わる可能性があります。印が少なければ、社内で役割を作り直す道も残っています。どちらに転んでも、判断の材料は自分の手元にあります。次の一歩は、その材料を見てから決めれば間に合います。
次に動く前に、自分の立ち位置を確かめる
AIに置き換えられやすいかどうかは、職種の名前ではなく日々の作業の中身で決まります。求人を探し始める前に、今の仕事のどの部分が機械の側に移りやすいのかを整理しておくと、次の選択で迷いにくくなります。
(AI逃げ切りナビ編集部)