「AIに奪われる仕事」で検索すると、職種の一覧表が並びます。自分の職種が載っていれば不安になり、載っていなければ安心する。けれども読み終えたあとに残るのは、結局自分はどちら側なのかという疑問だけです。一覧表が役に立たないのは、置き換えの単位が職種ではないからです。この記事では、いま実際に起きている置き換えの境界線をひとつに絞って示します。境界線が分かれば、載っていない職種でも自分で判断できるようになります。
職種の一覧表では判断できません
同じ経理という職種でも、伝票の入力と仕訳が中心の人と、資金繰りを社長と相談している人がいます。同じ営業でも、決まった台本で電話をかける人と、条件が合わない相手の間に立って落としどころを作る人がいます。前者と後者では、置き換えの順番がまったく違います。
置き換えは職種の単位ではなく、作業の単位で進みます。ひとつの職種の中から自動化しやすい作業が抜き出され、残った作業だけが人の手元に戻ってくる。その残りが少なければ席が減り、多ければ役割が変わって残ります。一覧表に自分の職種があるかどうかは、ほとんど意味を持ちません。
境界線は、体をどこに置く必要があるかです
では作業を分ける線はどこにあるのか。いくつもの軸を並べて比べていくと、最後に残るのはひとつです。その仕事が、その場所に体を置くことを必要とするかどうかです。
画面と回線があればどこでもできる仕事は、機械の側に移りやすくなります。データが揃っていて、手順が決まっていて、正しさを後から機械的に確認できるためです。一方で、その場所にいなければ情報が手に入らない仕事は残ります。物の状態を触って確かめる、天気と人の動きを見て順番を組み替える、相手の様子を見ながら伝え方を変える。これらは文字になっていない情報を扱う仕事です。
画面の中で完結する仕事から順に置き換わります
この境界線で並べ直すと、これまでの動きが説明できます。定型的な問い合わせ対応、書式への転記、議事録の作成、数字の集計。どれも画面の中だけで完結し、成果物を機械が確認できます。だから先に置き換わりました。
次に来るのは、画面の中で完結するが判断がやや複雑な作業です。文章の下書き、簡単な設計の検討、一次的な審査。この層はすでに道具として使われ始めています。ここに自分の仕事が含まれる場合、置き換えの波が届くまでの時間は長くありません。
現場に体がある仕事は、記録に残っていない情報を扱います
反対側に並ぶのは、現場に体を置く仕事です。建設の現場で図面と実物を照合する、設備の異音に気づく、患者の様子から変化を読む。これらの仕事は、その場に行かなければ入力が得られません。入力が得られないのですから、遠隔からの自動化は成り立ちません。
実際に、こうした分野では人が足りていません。厚生労働省の職業安定業務統計では、建築・土木・測量技術者の有効求人倍率は4.85倍です。募集をかけても集まらない状態が続いています。仕事が減っている分野と、人が集まらない分野が同時に存在しているのが今の状況です。
残る仕事の中にも、条件はあります
ただし、現場に体があれば安全と言い切るのは乱暴です。現場の仕事にも、記録に残せる部分は必ずあります。書類の作成、写真の整理、数量の拾い出し。こうした部分は道具に置き換わっていきます。
置き換わったあとに残るのは、判断と調整です。だから現場の仕事を選ぶ場合も、作業をこなす立場で止まらず、判断する立場に近づいておく必要があります。同じ現場にいても、指示されたことだけをやる人と、段取りを決める人では立場の強さが違います。
自分の仕事を測る三つの質問
最後に、自分の仕事を測る質問を三つ挙げます。
- その仕事は、自宅の画面と回線だけで完結しますか
- できあがったものの正しさを、機械が確認できますか
- 引き継ぎの資料だけで、他の人が同じ成果を出せますか
三つすべてに「はい」が付くなら、置き換えの順番は前の方です。「いいえ」が混ざるなら、いま残っている理由はそこにあります。どちらだったとしても、判断の材料は自分の一日の中にあります。次は、自分の職種をこの軸で並べ直してみてください。
次に動く前に、自分の立ち位置を確かめる
AIに置き換えられやすいかどうかは、職種の名前ではなく日々の作業の中身で決まります。求人を探し始める前に、今の仕事のどの部分が機械の側に移りやすいのかを整理しておくと、次の選択で迷いにくくなります。
(AI逃げ切りナビ編集部)