
読者(PT歴12年)

ぽんこつ先輩
「理学療法士はAIに仕事を奪われる」——この手の話、ちょっと増えてきましたよね。でも結論から言うと、AIに奪われるリスクについては「今のところ大丈夫」が正直なところです。
ただ、その安心感で止まってほしくないんです。「AIに奪われる」という不安の裏に、もっとリアルな問題が隠れています。PT有資格者が毎年1.1万人増え続け、複数の業界メディアが2026年前後から供給の飽和感が顕在化し始めると指摘しています——そちらが本当の話です。
この記事ではAIと供給過剰という2つのテーマを、数字と具体例でPT専用に深掘りします。5分だけお付き合いください。
この記事の結論(時間ない人向け)
- AIに奪われる心配はほぼない——PTのAI代替可能性は0.4%(2015年推計・二次引用)。制度上も有資格者による直接実施が前提で、「AIで人員削減」は現行制度では難しい
- むしろAIはPTの患者を一番苦手としている——AI姿勢推定は高齢者・義足・車椅子ユーザーへの精度が大幅に低下することが複数の査読論文で確認されている。PTのクライアントの大半がまさにその層という逆説がある
- 本当の脅威は「人間同士の椅子取りゲーム」——有資格者247,546人(2026年3月末)・年1.1万人増で、2040年には需要の約1.6倍の供給過多になる見通し
- 令和8年改定でPTが初めて処遇改善加算の対象になった——介護保険の訪問リハ・介護予防訪問リハで加算率1.5%が新設(介護報酬)。給料を上げる手段として、訪問リハへの転向が実際的な選択肢になってきた
- 認定資格は有資格者の6.7%しか持っていない——認定理学療法士取得者は16,473名のみ。100人に6〜7人という稀少性が、椅子取りゲームの出口になる
「AIよりも怖い数字がある」——そちらをきちんと理解してから動きたい方は、このまま読み進めてください。
「理学療法士はAIに奪われる」——正面から答えます
不安な気持ちはよくわかります。まずデータを見てください。
野村総合研究所とオックスフォード大学の共同研究(2015年)によれば、理学療法士のAI代替可能性は0.4%です。放射線技師(62.4%)・薬剤師(38.8%)と比べると、圧倒的に低い数字です。
ただ、この数字について正直に留保をつけます。先に弱点を言っておいた方が信頼できると思うので。
これは2015年の推計です。ChatGPTもなかった、生成AIブームが始まるずっと前のデータです。「今の生成AIを踏まえた分析か」と聞かれると、そうではありません。さらに、PTの個別数値は週刊エコノミスト経由の二次引用で、NRI原典に明示されているわけでもないです。
だからこの0.4%だけを安心材料にするつもりはありません。もっと現在進行形で確認できる根拠が2つあります——①今の査読論文が示す「AIはPTの患者を最も苦手とする」という逆説(次のセクションで詳しく)、②診療報酬制度の縛り——この2つの方が、2026年の現実に近い安心の根拠です。
なぜPTのAI代替可能性がこんなに低いか、背景にある理由の一つはPTの仕事の核心にあります。
「評価→仮説→介入→その場での再評価」——PTはこのループを患者の反応を見ながら数秒単位で更新しています。患者の顔色、筋緊張の変化、呼吸パターン。これらをリアルタイムで読み取りながら介入を調整する臨床推論のプロセスは、現在のAIが再現できる構造になっていません。
もう一つは診療報酬制度の縛りです。令和8年(2026年)の診療報酬改定でも、リハビリ職の人員配置基準についてAI代替による緩和はありませんでした。有資格者が直接実施することが算定の前提なので、AIが補助に入っても即「人員削減」という話にはならない構造です。
ここまでは安心材料。でも次のセクションから、もっと強い根拠の話に移ります。
逆説:「AIはPTの患者を一番苦手としている」——査読論文で確認できること
ここが、他のリハビリ系記事ではほとんど書かれていない部分です。
AI技術の中に「姿勢推定・動作解析」があります。カメラやセンサーで人体を検出して、骨格・重心・動作を分析する技術です。リハビリへの応用も進んでいますが、2024〜2025年の査読論文を確認すると、この技術に共通した弱点が見えてきます。
AIは「標準的な体型・定型的な動作」で学習されており、PTが日々相手にする臨床集団に対して精度が落ちる——これが複数の研究で確認されています。
📑 査読論文が示す「AI姿勢推定の臨床的限界」
- 健常若年者でも臨床基準に未達(Rode et al., Scientific Reports, 2025):臨床解釈に必要な関節角度誤差5°以内を、テストした全モデルが達成できなかった。膝屈曲誤差は最大35.7°。被験者は健常若年者であり、著者自身「障害のある患者の病的歩行分析への適用は限定的」と明記
- 義足ユーザーで誤差が約2倍に(Zhou et al., PLOS Digital Health, 2025):OpenPoseを義足ユーザーに適用したところ、義足側の推定誤差は健肢側の約2倍。著者「現在のモデルは健康な人物を主体に訓練されており、義足への汎化が不十分」
- 車椅子ユーザーで骨格検出が失敗(Huang et al., CHI ’24, 2024):脚のキーポイントの誤配置・完全な検出失敗を確認。原因は「訓練データでの過少表現」
- 高齢者(平均85.2歳)で空間的指標の精度が低い(Mehdizadeh et al., J NeuroEng Rehabil, 2021):ステップ幅r=0.31〜0.64、安定余裕r=0.0〜0.45。PTが評価したい「安定性・歩行の左右差」がまさに苦手
- 脳卒中患者の関節角度・非対称性は精度が落ちる(Stenum et al., PLOS Digital Health, 2024):足関節角度誤差6.3°(臨床閾値5°超)、前額面の歩行非対称性r=0.230(弱相関)
- 切断・肥満患者で関節追跡が容易に失敗(Avogaro et al., Frontiers in Computer Science, 2023):サーベイ論文。「こうした場合、事前学習済みモデルは関節追跡や骨格モデルフィッティングに容易に失敗しうる」
※ただし、脳卒中患者のステップタイム(時間的指標)はr≥0.980、ステップ長はr≥0.922と、いずれも良好な精度が出ています(Stenum 2024)。「AIはリハビリで一切使えない」という話ではありません。PTが特に見たい「関節角度・歩行非対称性・安定性評価」という部分でこそ精度が落ちる、というのが正確な理解です。
PTのクライアントを想像してみてください。脳卒中後遺症・脊髄損傷・高齢者のバランス障害——まさに「AIが精度を出しにくい患者層」ばかりです。AIがリハビリ領域で最も苦手とするのは、PTが日常的に関わる患者群でもある。だから0.4%という数字の背景には、この構造もあります。

ぽんこつ先輩
PTが現場で実際に使うAI製品3選(2025〜2026年)
「AIはPTの仕事を奪わない」と言いましたが、「AIが現場に入ってこない」とは言っていません。むしろ逆で、PTが使うAIツールは着実に増えています。ここを知っておかないと「使いこなせないPT」になります。
AYUMI EYE medical(歩行分析AI)
腰に小型センサーを装着し、iPad/iPhoneと連携して「推進力・バランス・リズム」の3指標を数値化するシステムです。医療機器として認証されており、D250(平衡機能検査)として250点の診療報酬算定が可能(医師の医学的必要性の判断が前提)。
2026年時点でシリーズ累計導入は1,000件以上(医療・介護施設)。「歩行の数値化→治療効果の可視化→患者への説明」という流れをAIがサポートします。
CareWiz トルト(歩行動画AI解析)
スマホで5mの歩行動画を撮影してアップロードするだけで、約2分でAI解析とコミュニケーションシート(PDF)を自動生成するシステムです。歩行速度・リズム・左右差などを分析します。スマホ1台で使えるため導入ハードルが低く、トヨタ自動車健康保険組合の老人保健施設など複数の医療・介護施設での導入実績があります。
ORGO MYoACT(3D動作解析・2025年7月リリース)
2025年7月28日に正式リリースされたシステムで、スマホ・タブレットで撮影した動画から筋活動量・関節トルク・床反力・重心位置を3D解析します。専用の多点カメラシステムが必要だった動作解析を、スマホ1台でできるようにしたのが革新点です。
現時点では医療機器登録の確認が取れていないため、研究・リハビリ計画支援用途として使う位置づけです。臨床での活用に際しては、各施設での確認が必要です。
📋 PT向けAIツール3選まとめ
- AYUMI EYE medical——医療機器認証済み・D250(250点)算定可・累計1,000件超
- CareWiz トルト——スマホ動画→約2分でAI解析・コミュニケーションシート自動生成
- ORGO MYoACT——2025年7月リリース・スマホで3D動作解析(研究・リハビリ計画支援用途)
「あるらしい」で済ませているのと「使ったことがある」では、採用面接でも職場での評価でも差が出ます。まずAYUMI EYEの仕組みとD250算定の流れを把握するだけでも、同僚と1段の差がつきます。
本当の脅威は「人間同士の椅子取りゲーム」
ここからが、この記事で一番伝えたい部分です。
AIの話を一旦置きます。PTにとってのリアルな脅威は、同業者の急増です。
日本理学療法士協会の公式データによると、PT有資格者は2026年3月末時点で247,546人。毎年の純増ペースは約11,000人で、止まる気配がありません。
📊 PT有資格者の増加ペース(日本理学療法士協会)
- 2025年3月末:236,390人
- 2026年3月末:247,546人(前年比+11,156人)
- 年間純増ペース:約11,000人
- 2040年推計:供給が需要の約1.6倍(厚労省PT・OT需給推計2019年)
※2040年の推計は厚労省第3回PT・OT需給分科会(2019年)に基づく複数メディア一致値。OT(1.3倍過剰)よりPTの方が供給過剰リスクが大きい。
養成校の「定員充足率」が示す意外な事実
一見矛盾するようですが、養成校が増えすぎた結果、今度は「学生が集まらない」という状況になっています。
厚生労働省の社会保障審議会医療部会(2025年10月)の報告によると、理学療法士の養成施設の定員充足率は平成27年度(2015年)の88.8%から、令和6年度(2024年)には78.0%までじわじわと下がっています。
地域格差も極端で、充足率が最も高い京都府は129.2%(定員を超える志願者)、最低の山口県は55.0%(半数しか集まらない)という74.2ポイントの差があります。
⚠️ 「定員割れ」が意味すること
- 理学療法士を目指す人は減り始めている
- 地方の小規模専門学校では経営が不安定な例も出てきている
- 一方で、すでに資格を取った人間は毎年1.1万人ずつ積み上がっている
- 「飽和が見えるから志望者が減る」→「でも有資格者は増え続ける」という構造
「どこにいるか」で椅子の数がぜんぜん違う
協会会員ベースで就業先の分布を見ると、病院(急性期・回復期リハビリ病棟)だけで全会員の約3割が集中しています。みんながいる場所で戦っているということです。
反対に、訪問系で働くPTは少ないです。内訳を整理すると、訪問リハビリ事業所単体では会員の0.8%(1,142人)のみ。訪問看護ステーション(4,996人)を合わせた訪問系全体でも、会員の4.2%(6,138人)にとどまります。一般企業は0.5%(725人)、スポーツ関連(プロ・企業チーム)は0.03%(43人)です。
「みんなと同じ場所にいる限り、椅子取りゲームからは降りられない」——この数字が示しているのは、そういうことです。
令和8年改定、PTの仕事は何が変わったか
2026年6月1日施行の令和8年改定(診療報酬・介護報酬)は、PTの働き方に直撃する内容でした。負の変化と正の変化が混在しているので整理します。
🏥 令和8年改定(診療報酬・介護報酬)のPT直撃ポイント(2026年6月1日施行)
- 急性期リハ加算が段階制に変更:入院初日〜3日目 60点/単位・4〜14日目 25点/単位(早期に動けるPTが高く評価される仕組みに)
- 離床を伴わないリハに90%減算:1日2単位超の「ベッドサイドで動かすだけ」のリハは算定が大幅に難しくなった
- 訪問リハに処遇改善加算1.5%が新設(介護報酬):PT・OT・STが初めて処遇改善加算の対象となりました(出典:PT-OT-ST.NET、介護給付費分科会答申)。※介護保険の訪問リハ・介護予防訪問リハが対象。医療保険の訪問リハビリへの適用はありません。訪問転向の給与面での追い風
- 休日リハ加算25点/単位が新設(入院患者限定):土日も人員確保が必要に
- PT専従者の業務範囲が拡大:病棟外・他病棟・在宅医療・介護施設助言等が可能に
読者にとって特に大事なのは3点です。
まず「急性期で早く動けるPT」の価値が上がりました。入院初日から3日目は60点という高い加算が取れます。スピードと根拠のあるアセスメント力が求められる。
次に「受動的にこなすリハ」の居場所がなくなってきました。離床を伴わないリハへの90%減算は、「とりあえず単位を消化する」という動き方を直撃します。
そして訪問リハへの転向を検討している方には朗報です。介護保険の訪問リハ・介護予防訪問リハを対象に、PT・OT・STが初めて処遇改善加算(1.5%)の対象になりました(出典:PT-OT-ST.NET、介護給付費分科会答申)。訪問リハ事業所での年収アップのベースが、改定で一段上がったことになります。
椅子取りゲームから降りる3つのルート(数字付き)
「供給過剰が来る」とわかってから動くのと、「来てから気づく」では結果がぜんぜん違います。具体的な選択肢を3つ、数字と一緒に整理します。
ルート①:認定・専門資格で「稀少性」を持つ
日本理学療法士協会が認定する「認定理学療法士(21分野)」の取得者は、2026年3月時点で16,473名。有資格者247,546人の6.7%のみです。100人PTがいれば、認定資格を持っているのは6〜7人という計算になります。
さらに希少なのが「専門理学療法士」で、取得者は1,855名=有資格者の0.7%。150人に1人しか持っていない稀少性があります。
📌 認定理学療法士の21分野(一部)
- 神経系:脳卒中・神経筋障害・脊髄損傷・発達障害
- 運動器系:運動器・切断・スポーツ・徒手療法・補装具
- 内部障害系:循環(心臓リハ)・呼吸・代謝
- 訪問・地域・介護予防・疼痛管理など
※資格手当・昇給の具体額は施設によります。統計的な裏付けはないため、取得効果については各施設の規定を確認してください。
「6.7%しかいない」という稀少性は、供給過剰の海の中で自分を差別化する手堅い方法の一つです。特に心臓リハ・がんリハ・呼吸リハなど、高齢化で需要が伸びている分野を選ぶと専門性と需要が一致します。
ルート②:訪問リハへの転向(年収レンジと現実)
訪問リハへの転向を考えるなら、年収の実態を正直に整理しておきます。
まず基準線として、令和7年賃金構造基本統計の443.6万円(PT・OT・ST・視能訓練士の4職種合算・全施設平均)があります。病院勤務PTは求人提示レンジとして400〜450万円が目安です(地方・中小規模病院の下位レンジは400〜430万円台、都市部・大病院は450万円超も多い)。
訪問リハ勤務PTについては、公的統計が存在しないのが正直なところです。求人票ベースでは訪問看護ステーション勤務PTで月収29万円(年収約407万円)という集計値もあります。インセンティブ込みの実績レンジとして450〜550万円程度を目安とする情報が多いですが、これはインセンティブ制事業所・月60件以上訪問する中堅以上が条件です。新人や固定給のみの事業所では有意差が出にくいことも知っておいてください。
「600万円可能」という情報をネットで見かけることがありますが、それは①管理者候補・②インセンティブ制で月80件以上・③基本給28〜30万以上という3条件が重なる場合です。「事業所によっては」という修飾が必要です。
病院比との差額は、条件が揃えば「+50〜100万円程度とされることが多い」というのが現実的な表現です。
訪問系で働くPTは、訪問リハ事業所単体では会員の0.8%、訪問看護ステーションを合わせた訪問系全体でも4.2%しかいません。参入余地は確かにある領域です。ただし、訪問は診療報酬・介護報酬の制度変更の影響を受けやすい領域でもあります。この点は念頭に置いておいてください。
ルート③:産業理学療法(企業内PT)で差別化
健康経営が広まる中で、一般企業や健康保険組合がPTを雇用するケースが増えています。これを選んでいるPTは今のところ会員の0.5%(725人)のみ。参入者が少ない分、希少価値が高いポジションです。
「病院か介護施設か」の2択で考えている人には、ここが盲点になっています。求人数・年収中央値の公的統計はまだ少ない段階ですが、健康経営の浸透で需要は増加傾向にあります。
3ルートを比較して決めるための材料集め
コメディカル専門の転職サービスは、訪問リハの非公開求人や認定資格を評価する施設の情報を持っています。「今の施設の待遇は業界標準のどこにあるか」を知るだけでも、動き方が変わります。
📋 PT向け転職サービス4社(登録無料・市場確認だけでもOK)
転職するかどうかは後で決めれば十分です。登録して担当者と話し、今の市場感を掴むだけでも意味があります。登録は無料・5分で終わります。
よくある質問
読者のリアルな疑問、ここで全部答えます
「将来性ないって本当?」「転職タイミングはいつ?」「認定資格って取る意味ある?」など、現職PTが引っかかる疑問を、ぽんこつ先輩(人材業界20年)が現場目線で答えます。

ぽんこつ先輩
Q. 理学療法士は「やめとけ」と言われる理由は何ですか?
主に3つです。①令和7年の賃金構造基本統計ではPT・OT・ST等の合算平均年収が443.6万円で、全給与所得者の平均を16〜20万円程度下回る。②診療報酬には1単位あたりの点数に上限があり、どれだけ多くリハビリを行っても収入が頭打ちになる構造的な壁がある——これが昇給が伸びにくい背景です。③供給過剰が進み、採用競争が厳しくなってきている——これらが複合した結果です。
ただこれは「病院・急性期・同じ地域に留まり続ける」ルートを続ける場合の話です。訪問リハ転向・認定資格・地域移動という選択肢を取れば、年収や働きやすさは大きく変わります。
Q. 供給過剰はいつから本格的に影響する?
厚労省の需給推計(2019年)では2040年に向けてじわじわと過剰が拡大するシナリオです。「2026年から急に変わる」というより、複数の業界メディアが「2026年前後から飽和感が顕在化し始める」と指摘しています。都市部では採用競争の激化や条件交渉の難化として体感が出やすく、地方では人手不足が続く施設も多い——地域差が大きいです。
Q. 認定理学療法士は取る意味がある?
稀少性という意味では、かなりあります。有資格者247,546人のうち取得者は16,473名(6.7%)。100人に6〜7人しか持っていない認定を取ることは、供給過剰の中での差別化になります。資格手当の金額は施設によってバラツキがあり統計的な裏付けはないため「いくら上がる」とは断言できませんが、採用・評価の面での優位性は出やすいです。
Q. 訪問リハへの転向は体力的にきつくない?
正直に言うと、楽ではないです。車で患家を回る移動型の働き方なので、真夏の炎天下での移動や、雨の日に複数の家を回る体力的な消耗があります。また病院と違い、急変や緊急対応を一人で判断しなければならない場面もあり、精神的な責任の重さも変わります。
その一方で、患者1人あたりの関わりが深くなるという側面があります。「病院でリハ単位を数こなす」より「一人の患者の生活に長く寄り添う」仕事が好きなPTには、むしろ合うという声も多いです。「楽になれる選択肢」ではなく「別種の負荷に切り替わる選択肢」と理解した上で検討するのが誠実な見方です。
Q. AIツールを使いこなすのに、特別な知識は必要?
基本操作は難しくないです。AYUMI EYEは腰にセンサーを付けてiPadと連携するだけ、CareWizトルトはスマホで動画を撮影してアップロードするだけ。データの解釈にはPTとしての臨床知識が必要ですが、逆に言えばAIが出すデータを意味ある形で解釈・説明できるのはPTの専門性があってこそです。「AIが出した数値を患者に落とし込めるPT」が、これから強くなります。
まとめ——数字を知った人から動ける
整理します。
AIに奪われるリスクは、現時点でほぼないです。0.4%というAI代替可能性の数字(2015年推計・二次引用という留保はあります)に加えて、「AIはPTの患者(高齢者・障害者・義足ユーザー等)が最も苦手とする臨床集団である」という、複数の査読論文で確認できる逆説があります。制度上も有資格者の直接実施が診療報酬の前提なので、AIが入ってもすぐ人員削減という話にはなりません。
ただ、本当の脅威は別のところにあります。有資格者が毎年1.1万人増え続け、2040年には需要の約1.6倍の供給過多になるという見通しがある——これが現実です。「椅子取りゲームが本格化する前に動けるか」で、5年後・10年後のキャリアが変わります。
今すぐ大きく動く必要はないです。まず自分の現状を数字で知るところから始めれば十分です。認定6.7%・訪問4.2%——その数字を知ってから動いた人が、5年後に残っています。
🗓️ シンプルなアクションプラン
- 今日中にできること:自分の年収を令和7年賃金構造基本統計の443.6万円(業界平均の目安)と比べてみる。上か下かを把握するだけでいい
- 今週中にできること:認定理学療法士21分野のうち、自分の臨床に一番近い分野を1つ調べる。協会サイトで確認できます
- 1〜3ヶ月後:コメディカル専門の転職サービスに無料登録して、今の求人相場と自分の市場価値を担当者に確認する
- 6ヶ月後:転職するか・専門性を深めるか・訪問リハへ転向するかを判断する

ぽんこつ先輩
供給過剰が本格化する前に、今の自分の市場価値を知っておこう
転職するかどうかは後で決めれば大丈夫。担当者と話すだけで、今の施設の条件が業界のどこにあるかが見えてきます。
同じリハビリ職でOT・STが気になる方、介護職とAIの比較を知りたい方はこちらも読んでみてください。
